<社会福祉原論 §1社会福祉関係法制と実施体制及び財政の概要>



§1社会福祉関係法制と実施体制及び財政の概要

過去5年間の出題頻度★★★★★

*このセッションのポイント
・社会福祉制度の基本となる主な法律、社会福祉法・生活保護法・児童福祉法・母子及び寡婦福祉法・老人福祉法・身体障害者福祉法・知的障害者福祉法 について基本的な内容を理解しましょう。特に社会福祉法は過去5年間必ず出題されていますので、しっかり内容を理解しておきましょう。

§1 1章 社会福祉法

過去5年間の出題頻度★★★★★

*この章のポイント
・2000(平成12)年に以前の社会福祉事業法から社会福祉法へ改正されました。この改正内容と、この法律の中で明記されている基本的な項目(定義・理念・組織など)について理解しておきましょう。 

(1)社会福祉法1 制度の概要

日本の社会福祉の法体制は大きく2つの枠組みによって成り立っています。

まず、日本の社会福祉のすべての分野について、共通する基本項目を定めた

「社会福祉法」

があります。家でいえば土台、基礎工事部分に当てはまりますね。

次に各福祉分野について制度を定めた

生活保護法・児童福祉法・母子及び寡婦福祉法・老人福祉法・身体障害者福祉法・知的障害者福祉法があります。家でいえば土台の上の部屋、屋根などにあたりますね。

これを図に表すと


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といった感じになります。クリックすると大きい図になります。

特に社会福祉法は日本での福祉分野の法律の要(かなめ)となる法律ですので、次で詳しくポイントを解説していくことにします。

(2)社会福祉法2 社会福祉法の目的・理念など

旧社会福祉事業法が2000(平成12)年の改正により「社会福祉法」となりました。

社会福祉法ではまず、第1条でその「目的」を述べています。すなわち


「この法律は、社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定め、社会福祉を目的とする他の法律と相まつて、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉(以下「地域福祉」という。)の推進を図るとともに、社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り、もつて社会福祉の増進に資することを目的とする。」


となっています。オレンジ色の部分が特に大事なポイントとなります。すなわち


1)社会福祉全分野における共通基本事項を定める

2)利用者の利益の保護(苦情解決制度など)

3)社会福祉の地域推進(施設から地域社会へ→介護保険制度、障害者自立支援法など)

4)社会福祉事業の適正運営(運営適正化委員会など

などが重要ポイントとなります。


同じく、社会福祉法では同法第3、4、5条でその理念をのべています。

1)「福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない。」(第3条)

2)「地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない。」(第4条)

3)「社会福祉を目的とする事業を経営する者は、その提供する多様な福祉サービスについて、利用者の意向を十分に尊重し、かつ、保健医療サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図るよう創意工夫を行いつつ、これを総合的に提供することができるようにその事業の実施に努めなければならない。」(第5条)

また、社会福祉法では2種類の社会福祉事業を定めています。この部分は、試験で混同しやすいところなのではっきり区別して覚えておきましょう。



1)第一種社会福祉事業

・主に入所施設に関する事業で、生活の場となるためにサービス利用者の人格・人身の尊厳がきちんと守られるよう、国や地方公共団体が経営や金銭の保護・援助を行う事ができるようになっています。

・また、そのような理由により、経営主体は原則として国・地方公共団体・社会福祉法人に限定されています。

2)第二種社会福祉事業

通所、在宅サービスに関する事業でデイサービス、ホームヘルプサービス、保育所の相談事業などがこれに当たります。

・第一種社会福祉事業と違い、サービス利用者の人格や人身に及ぼす影響がそれほど大きくない事業になっています。また、経営主体に制限はありません。



・重要な追加項目として

「福祉サービス利用援助事業」

があります。これは「地域福祉権利擁護事業」の具体化といっていいでしょう。



*福祉サービス利用援助事業とは・・・http://www.ymgt-shakyo.or.jp/kenriyogo/jigyougaiyou.htm に詳しい内容が載っています

(3)社会福祉法3 行政組織、社会福祉法人など

社会福祉法には各福祉法に共通する組織・機関についての内容が明記されています。それぞれについて解説していきましょう。

「地方社会福祉審議会」は

●都道府県・指定都市・中核都市に必ず置かれています。(義務設置)

●社会福祉に関する事項(ただし児童福祉・精神障害者福祉をのぞく)を調査審議する。

ということがポイントになります。特に義務設置ということをポイントとして押さえておきましょう。

次に福祉に関する行政機関の代表として「福祉事務所」があります。

これは公的扶助論のこのページに詳しく解説していますので、そこを参照してください。

「社会福祉法人」は社会福祉法 第2条に定められている社会福祉事業を行うことを目的に設立された法人になります。

特徴として

名称独占(第23条) 社会福祉法人でない者が社会福祉法人という名称を使ってはならない(これは社会福祉士と同じですね)

●収益事業をのぞいて国税、地方税が課税されない。これは、近年の社会福祉法人でない民間福祉サービス事業者から、同じサービスを行っているのに自分たちは税金を取られており、税制上の不公平だという声が挙がる根拠になっています。

国、地方公共団体からの補助金等の助成を受けられる。(第58条)ただし、助成を受けると特別に強い監督を受けることになります。あめとむちですね。

(4)社会福祉法4 福祉サービスの適切な利用

2000(平成12)年の社会福祉法改正により新たに「福祉サービスの適切な利用」という章ができました。

これは今後日本の福祉サービスの考え方の指針となる重要なポイントですのでしっかり押さえておきましょう。

この「福祉サービスの適切な利用」の章では、さまざまな施策が述べられていますが、大きな考え方としては

「福祉サービスを与える側の視点からではなく、受ける側、すなわち利用者の側からとらえる」

というところが新しい考え方となります。それではその章の中身を見ていきましょう。

1)まず、サービスを提供するサービス提供者側が、利用者から適切に使用してもらうことが大切なポイントとなります。

皆さんがさまざまな商品やサービスを買うときに、店員さんやカタログで、なるべく多くの情報を集めて買うサービスを決めるのと同じように、福祉のサービスを利用する人も、サービスを選択する際、なるべく多くの情報の中から自分にあったサービスを選べるようにしなければなりません。

そこで、社会福祉法では、第75条で

  • 社会福祉事業者の経営者に、情報提供に努めることを求めています。(具体的にはわかりやすいパンフレットなどの作成等ですね)
  • 国、及び地方公共団体に、福祉サービス利用者が必要な情報を求めることができるようにする事を求めています。

又、第76条では

  • サービス利用契約の申し込みの際の説明義務が課せられ(普通に商品を買うときには当たり前のように説明をしてくれますけどね)

さらに第77条では


  • サービス利用契約が成立した場合には書面での交付義務が課せられています。



最後に第78条では、

 

  • 国に対しての第三者評価に関する仕組みを用意することとされています。

これは、どういうことかというと、

「サービス提供者がただ単に機械的に、サービスの説明や書面の交付義務をすまればそれでよい。」

ということではなく、一サービス提供者として自らがサービス利用者に対して、常にサービスの質の向上に努めなさいよ。という意味になります。


第三者というのは、外部の人間の事ですから、外部の人間の目にさらされることによって、自己満足でないより客観的なサービスの評価ができるということになります。

少し違いますが、いわいる「口コミ」に似た考え方といえるでしょう。口コミは客観的といいにくい面がありますが、サービス提供者側の一方的な評価ではなく、実際に利用してみた人の生の声が聞けるという点で非常に貴重なものと思います。



*第三者評価とは・・・http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/hyoka/hyokatop.htm に詳しい解説が載っています。


2)次に実際にサービスを利用したのはいいけど、不満やもっとここを改善してほしい点が出てきたなどの苦情(クレームともいいますね)に対しても社会福祉法では第82条で


  • 社会福祉事業の経営者は、サービス利用者に対して、適切な苦情の解決に努めること。


と明記されています。特に社会福祉施設では施設最低基準を満たすために盛り込まないといけないものの1つに入っています。


これも、普通に商品を買って何かあったらクレームを言い、それを解決するのは売る方にとっては当たり前の事でものを売る時よりも、むしろ売ってしまった後のクレーム処理をいかにうまく対応するかでその商品を売った方の価値が認められるとまで言われています。

こうやって、1)、2)を見てくると、一般のサービス業界では当たり前のこととして行われていたことが、福祉サービスの世界ではやっと、2000(平成12)年に法改正で具体化されたのですね。いかに福祉の世界が提供者側の論理で行われてきたかという感じがするのは私だけでしょうか?




3)福祉サービスを利用する人々がすべて適切な判断能力を持っているとは限りません。

例えが適切かどうかはわかりませんが、例えば携帯電話を契約する際には子ども(未成年者)は保護者の同意が必要となります。これは、子どもではまだ携帯電話の使用には適切な判断能力を持った人が必要ということの現れだと思います。
つまり福祉サービスの利用者の中には、知的障害者、精神障害者、認知症高齢者など判断能力が十分でないために福祉サービスを自らの意志で選び契約を結ぶということが難しい方もいらっしゃるのです。

この、判断や契約を結ぶことが難しい方に対して社会福祉法では、第81条で


  • 都道府県社会福祉協議会は、第110条第1項各号に掲げる事業を行うほか、福祉サービス利用援助事業を行う市町村社会福祉協議会その他の者と協力して都道府県の区域内においてあまねく福祉サービス利用援助事業が実施されるために必要な事業を行うとともに、これと併せて、当該事業に従事する者の資質の向上のための事業並びに福祉サービス利用援助事業に関する普及及び啓発を行うものとする。




と明記しています。この81条に基づいて行われるのが
「地域福祉権利擁護事業」
になります。

「地域福祉権利擁護事業」については、地域福祉論のここで

http://www.csw-jyuken.com/85/92/118/000283.php

詳しく解説していますので地域福祉論をご覧ください。

ここでは、福祉サービスの判断能力が十分でない方のための事業として「地域福祉権利擁護事業」がありその事業の主体は社会福祉協議会が担っているということを理解しておきましょう。

4) 2)の福祉サービス利用者からの苦情を解決したり3)の地域福祉権利擁護事業の適切な運営を行うために社会福祉法第83条では都道府県社会福祉協議会内に
「運営適正化委員会」
が置かれています。

この「運営適正化委員会」も地域福祉論で詳しく解説しますのでそちらを参照してください。