<社会福祉原論 §1  2章 福祉六法>



過去五年間の出題頻度★★★☆☆
*この章のポイント
・今まで日本の福祉の憲法ともいえる、「社会福祉法」について大枠を見てきましたが、ここでは憲法から各法(民法・刑法など)への解説を行いたいと思います。
福祉での各法はいわゆる「福祉六法」にあたります。ここでは、この福祉六法を1つづつ解説していきます。この分野は、最近3年間毎年出題されていて、比較的出題されやすい分野だといえます。
又、ここでは各法の概要のみ解説します。詳しい解説は各法の分野で解説しますのでそちらを参照してください。

 

 

 

(1)生活保護法

1)生活保護での基本原理と保護の原則

生活保護法では、法律上の基本的な理念(こういう考え方のもとでこの法律はできている)と実際に保護を行う時の原則(こういう原則に基づいて保護を行います)に分けて考えられています。原理とは「分析の根拠を示すものです。」原則とは「行動の指針を示すものです。」つまり

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となるわけですね。 (図をクリックすると大きな図になります)
では、法律の考え方の基本となる理念(根拠)にはどの様なものがあるのでしょうか?それは
 
・第1条 「生存権保障の原理」

・第2条 「無差別平等の原理」

・第3条 「最低生活保障の原理」

・第4条 「補足性の原理」

の4つになります。

特に第3条、第4条での考え方は、一般に皆さんがこの原理をみて思い浮かぶ「最低生活を保障してくれるのか、日本に住んだら安心だな」という考え方とは少々違い、国は「最低生活を保障しますが、最低生活しか保障しませんよ」という考え方に基づいています。つまり、最低生活の保障以外の部分は今の言葉で言う「自助努力でがんばってくださいね」というスタンスになるのですね。国が国民を何から何まで面倒を見るという考え方をしていたら、法律の考え方とちょっとずれますので注意してくださいね。

次に、実際の保護を行う際の原則(行動の指針)としては

・第7条 「申請保護の原則」

・第8条 「基準及び程度の原則」

・第9条 「必要即応の原則」

・第10条 「世帯単位の原則」

と、同じく4つになります。

2)扶助の種類


生活保護は「金銭給付」と「現物給付」との2種類の給付の方法をとっています。金銭給付はそのものズバリ金銭給付によって扶助を行い、現物給付は現物(薬、介護サービスなど)の給付によって扶助を行う事になります。

金銭扶助は、一ヶ月にいくらとくわけではなく、以下の6種類の給付金額の積み重ねによって計算された額が支給されるという形になります。

「金銭給付」の扶助

・生活扶助

・教育扶助

・住宅扶助

・出産扶助

・生業扶助(聞き慣れない言葉ですが、仕事に関する扶助になります)

・葬祭扶助

の6つになります。
現物給付」の扶助

・医療扶助

・介護扶助
(介護保険の施行により新たに加わった扶助になります。試験に出やすいポイントですね)

の2つになります。

「金銭給付」「現物給付」合わせて8種類になります。介護保険の前までは7つだったのですが、介護保険施行以後は1つ増えて8つになりました。ここはしっかり押さえておいてくださいね。



*扶助とは・・・貧困者に最低限の生活を保障するために行う経済的援助の事を指します。援助は精神的な部分も入りますが、扶助は経済的な援助が中心なのですね。


3)被保護者に対する権利と義務

生活保護を受ける人を被(受ける、こうむるという意味ですね)保護者といいますが、この被保護者には生活保護法により権利と義務が課せられます。

ちょっと余談ですが、最近は人々の権利ばかりが主張されるようになり国民としての義務の行使がおろそかになりがちになってはいないかと私は感じています。例えば「給食費未納」「親の子どものしつけ放棄」「保育費未納」など、特に子どもに関する問題が多いですね。
で、まず権利ですが
 

  • 「不利益変更の禁止」(第56条)                                  
    正当な理由がない限り、すでに決定された保護を不利益に変更されることはない
     
  • 「公課禁止」(第57条)                                        
    受給された保護金品を標準として租税やその他の公課を課せられることはない(保護費等には税金がかからないということですね)
     
  • 「差押禁止」(第58条)受給された保護金品が差し押さえられることはない
     
  • 「譲渡禁止」(第59条)保護を受ける権利は、他者に譲り渡すことができない
     
 

等になります。

次に義務として
 


  • 「生活上の義務」(第60条)                                     
    能力に応じて勤労に励んだり支出の節約を図るなどして、生活の維持・向上に努めなければならない
     
  • 「届出の義務」(第61条)                                      
    収入や支出など、生計の状況に変動があったとき、あるいは居住地または世帯構成に変更があったときは、速やかに実施機関等へ届け出なければならない
     
  • 「指示等に従う義務」(第62条)                                  
    保護の実施機関が、被保護者に対して生活の維持・向上その他保護の目的達成に必要な指導や指示を行った場合(生活保護法第27条)や、適切な理由により救護施設等への入所を促した場合(生活保護法第30条第1項但書)は、これらに従わなければならない
     
  • 「費用返還義務」(第63条)                                     
    緊急性を要するなど、本来生活費に使える資力があったにも関わらず保護を受けた場合、その金品に相当する金額の範囲内において定められた金額を返還しなければならない
     

になります。条文と内容の意味がわかるようにしておきましょう。

(2)児童福祉法

 

1)児童福祉法の理念

児童福祉法は日本の児童福祉を総括する法律となります。

第1条では「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。2、すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と規定されており国民の児童に対する協力義務と児童の権利の2つについて基本理念としてうたわれています。

2)児童福祉を行う行政機関について

では実際に児童の福祉を行う行政機関としては、どの様なところがあるのでしょうか?

まず、現場での実施機関として

「児童相談所」(第12条)

があります。

さらに補助機関として

「児童福祉司」(第13条)

協力機関として

「児童委員」(第16条)

があります。



*補助機関とは・・・行政庁その他の行政機関の職務を補助する機関のことです。


3)児童福祉の措置と契約

児童の福祉には、いわゆる「措置」によるサービスと、「契約」によるサービスに分けられます。最近の各法の改正によってサービスが措置から契約に変わっている部分がありますのでここでまとめておきましょう。

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図をクリックすると大きな図になります。

高齢者等と比較して、措置制度がまだ多く残っていることが児童福祉の特徴だといえるでしょう。これはまだ児童は契約という制度になじむ部分が少ないためだと考える事ができます。
(3)母子及び寡婦福祉法

1)母子及び寡婦福祉法の基本理念

母子及び寡婦福祉法では、第1条で「母子家庭等及び寡婦の福祉に関する原理を明らかにするとともに、母子家庭等及び寡婦に対し、その生活の安定と向上のために必要な措置を講じ、もつて母子家庭等及び寡婦の福祉を図ることを目的とする。」と基本理念を明記しています。

ここでは、特に書かれていませんが、1977(平成9)年の児童福祉法改正によって、母子家庭の援助の方向性が、

「自立支援」

へと変化してきている事を理解しておきましょう。

これは、高齢者の介護重視から、予防重視の考え方や、障害者の自立支援法成立など、日本の福祉の大きな方向点だと考えることができます。

2)母子及び寡婦福祉を行う行政機関・組織について

2002(平成14)年の「母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律」により、都道府県に置かれていて母子家庭及び寡婦の福祉の援助を行っている「母子相談員」の名称が

「母子自立支援員」

へと変更されました。この「母子自立支援員」は基本的に福祉相談所に配置されています。


*寡婦とは・・・配偶者のない女子であつて、かつて配偶者のない女子として民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十七条の規定により児童を扶養していたことのあるものをいう。

ここで注意しなければならないのは、児童福祉法での児童が、18歳未満であるのに対して、母子及び寡婦福祉法での児童は20歳未満(第6条の2)であることです、引っかけ問題にでるかもしれませんので、頭の片隅に入れておきましょう。
(4)身体障害者福祉法

1)身体障害者福祉法の基本理念と目的

身体障害者福祉法では、その基本理念を第1条で

「この法律は、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)と相まつて、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、身体障害者を援助し、及び必要に応じて保護し、もつて身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とする。」

と明記しています。

ここでのポイントは、

「社会経済活動への参加」という部分が、後の「援助」「保護」という語句より前にきている点にあります。

「社会経済活動への参加」とは、とりもなおさず働くことへの参加ということになります。これと自立とを合わせて考えますと、障害者自立支援法にもみられるように障害者の方の経済的自立をこの法律でも重視していると考えられるのではないでしょうか。

2)身体障害者福祉を行う行政機関について

身体障害者福祉を行う行政機関として「身体障害者更正相談所」があります。またそこには身体障害者専門の相談員である「身体障害者福祉司」が配置されています。
(5)知的障害者福祉法

1)知的障害者福祉法の基本理念と目的

知的障害者福祉法では、同法第1条で

「この法律は、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。」

と明記しています。

ここでも身体障害者福祉法の場合と全く同じように、「自立と社会経済活動への参加」という部分が冒頭にきています。同じように障害者の方の経済的自立をこの法律でも重視していると考えられますね。

2)知的障害者福祉を行う行政機関について

知的障害者福祉を行う行政機関として、身体障害者と同じように「知的障害者更正相談所」があります。また、そこには同じように知的障害者専門の相談員である「知的障害者福祉司」が配置されています。

身体障害者福祉→身体障害者更正相談所→身体障害者福祉司

知的障害者福祉→知的障害者更正相談所→知的障害者福祉司

となるわけですね。
(6)老人福祉法

1)老人福祉法の基本理念と目的

老人福祉法では、その目的を同法第1条

「この法律は、老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もつて老人の福祉を図ることを目的とする。」

とし、基本理念として2条、3条で「老後の生活の保障」「社会活動への積極的な参加」等を明記しています。ここでも障害者と同じように「社会活動の積極的参加」がうたわれていますね。


2)老人福祉法と介護保険法

2000(平成12)年に介護保険法が施行され在宅福祉サービスや施設サービスのほとんどは、介護保険法によりサービスが行われることになっています。

ただし、施設のサービスの中では、養護老人ホームは老人福祉法での「措置」となります。また、例外として介護保険サービスが利用困難な方の場合は、今までのように老人福祉法による措置になりますので注意が必要です。

試験では、例えば

すべての老人施設は介護保険制度でのサービスである」とか

「老人福祉法による措置は介護保険制度によりなくなった

といった設問では当然間違いになりますのでポイントとして押さえておきましょう。